その日は本当に寒かった。
部屋が温まらず冷え切った私を布団のなかで抱き締めて温めながら頭を撫でる。
匂いと体温と心の温かさに最後の殻がやっと取り払われる。
再び泣く。
怖かった、殻の中で猜疑心と恐怖に潰されて居た私は訴える。
その訴えを聞きながらずっと頭を撫でて腕枕をしてくれる。
泣き疲れて眠るまでにはそんなに時間はかからなかった。
一眠りしてからも部屋は温まらずマッサージも布団のなかで出来る範囲で行う。
そんな中で疑念をぶつける。
「暁さんのSMってどういうもの」
感覚や態度で理解しても言葉での詳細な説明はなかった。
それをどうしても今聞きたかった。
酷いプレイをして壊すだけなら正直誰にでも出来る。
酷いプレイの上手い人が現れたら簡単に主をすげ替えることができる。
だけど、そんなのは主従じゃない。
主をすげ替えることが可能な関係なんていうものを欲してない。
心で心の中を支配したい。
壊すのではなくて創りたい。
築き上げることで、二人の中の形ができる。
例えば、プレイをしなくても
隣を歩くだけだって「してあげたい」と俺が思った行為を隣で灯里が「して頂いてる」と下の立場で受け取れればいい。
それで灯里が喜べる形になることがなおいい。
二人で性的なふれあいをせずとも例えば腕枕で1日お昼寝でも「休ませたい」俺の気持ちを「二人で休ませて下さって嬉しい」と灯里が喜んでいればそれが俺の望んだ形になる。
物理的なSMよりもこの関係で創り上げたいのは精神的な主従だ。そう、答えてくれた。
そして言葉ではキチンと聞いていなかったお道具袋が出てこなくなった理由や私の感じていたあれこれを答え合わせをするように聞いて行く。
今の私には猜疑心と恐怖の芽を自力排除する力が無い。
ならもう暁さんの手で取り除いてもらうしかないと沢山聞いた。
蔦のようなものが生え始めていた心を綺麗に除草してもらえて、やっと心がフラットに戻れた。
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