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いのち

いま、いのちに向かい合ってる。

亡くなろうとしてる方、に向き合ってるのだ。
年老いた彼女の死を待つ時間に向き合う日々を過ごしている。
点滴につながれ
導尿のカテーテルに繋がれ
酸素を吸入され
それでも米寿を超えた躰に無体を強いることはまかりならぬと
常日、彼女より聞いていた意思と
彼女のそばに寄り添うことの許された人間の総意で
苦しみを取り除くための処置しか施さず
刻々と死に近づく躰を見ている。

意識はほぼ朦朧としているようだ。
歳を重ねた肌は弾力はないが優しい柔らかさで
私が枕元に座ると
意識があるときは目を開き、しかと見据え
手を伸べてくる。
今生を惜しむように
そして、私との思い出を噛みしめるように。
その手を私は取り、さすり、声をかける。

天気がいいね
ほら、日が昇ってきたよ

この状態になってから、私はほとんど夜を病室で過ごすようになった。
遠慮なく立ち入れる立場で
年齢的にも夜を病院で過ごす看取り看護に耐えうる人間は少ない上に
早朝に交代さえあれば5時間は眠れる勤務体制の仕事をしているため
夜の当番は必然私が勤めることになる。

隣にマットレスを敷き横たわる事はすれど
寝付くには程遠い夜を過ごす。
そして現に現れる意識を持て余し
病状のせいでままならぬ体を持て余してる時は
私が隣でそれを宥める。

そして、思う。
私は彼女のように老いることができるのか、と。
常日を生きていた彼女はとても「可愛らしい」老女だった。
そして、素敵な女性だった。
周りに愛され
己も周りを愛し
姻族である私にも親族と隔てなく接してくれた。
時には親族から向けられる口さがない言葉から私を守ることもしてくれた。
傍目から見てもかわいがり大切にして貰ってた。
そんな心の広い深い彼女のように老いること、身仕舞をする事は理想の終わり方なのかもしれない。

たくさんのことを教えてくれた人が
身をもって「最後の姿」を私に見せてくださる。
沢山の人に温かく接した彼女の枕辺には日々見舞客が絶えない
親族、友人、仕事でお世話になったと駆けつけてくださる方
聞きつけて駆けつけてくださる方は本当に多くそして一様に彼女の素晴らしさを語ってくれる。
縁を大切にした人、だからこその光景だ。
片付いている部屋も彼女の人柄を表している。
いつどうなるかわからない歳になってから部屋の片付けは可能な範囲で、ではあるが欠かさなかった。
時に私に手伝わせたそれは、いつ何があっても己が恥ずかしくないようにの行為だった。
その姿は恥ずかしくなく生ききるためには、という事を教えてくれている。

きっともう数えるほどしか一緒に朝日は拝めないだろう。
だから日が登るたびに私は覚醒してる彼女の手を握り告げる。
ほら、朝日がまた登ったね。今日もいい天気だよ。



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プロフィール

灯里

Author:灯里
M奴隷二年目
愛奴と呼んでいただけるようになった灯里と飼い主である暁さんとの関係
ここは灯里から暁さんへの報告書であり二人の間の色々を残す場所です。
やっと卵から孵ったくらいの私がどんな姿になるのか
暁さんの「願望」と私の「願い」が重なるときにどんな化学反応が起こるのか。
日々と逢瀬と想いを綴っていこうと思います。

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